2010年12月30日
平均寿命 健康寿命 そして快適健康寿命
 健康寿命についてWikipediaでは、日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間の事であり、WHOが2000年に公表したとある。
 このような言葉が公表された背景としては、医療や経済などの発達により、治療技術の向上、衛生環境の整備、栄養状態の改善などの結果寿命が伸び、単に生命の長さを求めるのでなく、クオリティーオブライフという言葉に示されるように、その質が求められるようになったという事が考えられる。
 日本人の健康寿命は2004年で男性72.3歳 女性77.7歳(WHO保健レポート)である。2004年の平均寿命は男性78.64歳 女性85.59歳であるから、男性で6.34歳 女性で7.89歳の差がある事になる。PPK(ピンピンコロリ)という言葉があるが、なるべくこの差が少なく、元気で生活していてある日ぽっくりというのが私の希望である。皆さんはどうであろうか?

 ここで歯および口の健康について考えてみたい。日歯広報12月15日号に「20本以上の歯 75〜84歳で26.8% 5年間で3.8%増」という見出しの記事が紹介されており、文中に70歳以上で29.6% 60歳代では64.1% 50歳代では80.9% 40歳代では93.8%でいずれの年代においてもポイントが上昇していると記されている。

 8020(ハチマルニイマル)という言葉は1989年(平成元年)より厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進している「80歳になっても20本の歯を残そう」という運動である。これは20本以上の歯があれば食生活が満足して行われるという事に由来している。
 食べるという事は現在では単に生存という事だけではなく楽しみのひとつにもなっている。また歯の存在は若さ、美しさの象徴であり、また歯周病が糖尿病や心臓、血管系などの全身の病気にも深く関係しているともいわれており、加えて20本以上のある人ではそうでない人に比べて医療費が安くすむという調査結果も発表されている。
 このように口の健康は、快適な生活を営む上においてなくてはならないものである。20本以上歯が残っている事を、仮に快適指数あるいは快適健康寿命と呼んでみる。そうすると70歳以上では約7割の人々が快適指数あるいは快適健康寿命に達していないという事であり、60歳代でも約4割の人々が不具合を感じながら生活を送っているという事である。

 平均寿命は昭和22年(1947年)では男性50.06% 女性53.96%で、この時代であれば、あまり歯の健康について云々する必要はなかったかもしれぬ。しかしながら平均寿命がどんどん伸びていく状況においてはどうであろうか?
 男女ともに平均寿命が70歳を超えたのが、昭和46年(1971年)で、男性70.17歳 女性75.58歳である。この時代から快適健康寿命は危機を迎える。8020運動が始まった1989年では男性75.91歳 女性81.77歳であり、平成21年(2009年)では男性79.59歳 女性86.44歳である。快適健康寿命が保たれているのが50歳代(59歳まで)だとしたら、1971年で男性11.17歳 女性16.58歳 1989年で男性16.91歳 女性22.77歳 2009年では男性20.59歳 女性27.44歳と差が開くばかりである。
 マスコミでは盛んに不況の事が伝えられ、将来に対する不安を持つ人々が多いと報道されているが、戦後間もない昭和22年から比べれば、はるかに経済は発展し、生活を楽しめるようになってきている。
 そうであればこそ、日本の歯科医療は現在のような治療中心のものから健康中心へと大きく変革していく必要がある。そうでなければ多くの国民からの支持は得られないであろう。
 

 
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