2010年12月21日
「ローマから日本が見える」を読んで
 私は朝の6時くらいからブログの記事の更新をする事が多いのですが、昨日の朝はデータベースサーバーダウンによるシステムトラブルによって、サイトに接続する事ができずブログの更新ができませんでした。また私のホームページに一時的にアクセスできなかった皆様にお詫びいたします。
 さて今日は、ちょうど先週読み終えた塩野七生の「ローマから日本が見える」の感想を少し記しておきたいと思います。
 私は、歴史が好きなので、歴史書、歴史に関する随筆や小説などを比較的よく読んでいます。
 歴史上の偉大な人物の生涯は波瀾万丈に富み、それだけでも面白いのですが、国の興亡などは壮大なドラマを見ているようで感情の昂りを感じます。そしてまた歴史からは現在の私たちにとって学ぶべき様々な教訓があるように思え時間を作って読むようにしています。
 そんな事から塩野七生も好きな作家の一人です。氏からはいろいろ学ぶ事が多いのですが、政治家の皆さんがもっと読まれれば示唆を受ける事が多いのではないかと思います。以前に取り上げた「日本人へ リーダー篇」や「日本人へ 国家と歴史篇」などと同様今回の「ローマから日本が見える」も多くの政治家に読んでもらいたい本であると思いました。


 さて、「ローマから日本が見える」から学ぶべきは、なにも政治家だけではありません。我々政治に翻弄されている医療界、特に歯科界にとっても学ぶべき事は多いのではないでしょうか。なぜなら歯科医療が自由診療だけであれば、医療問題は医学上の知識、技術の問題と患者さんと歯科医師の人間関係など個人的な問題(それだけでも大変)に限定されると思うのですが、現在のような社会保障、医療保険の問題が複雑に絡んでくると、国民を交え歯科界全体で考えなければならないと思うのです。

 「ローマから日本が見える」の中で塩野氏は、現代日本における混迷はなぜ起こったかについて「戦後の急速な経済成長にあったと見るべきでしょう。P34」と書き、また「どんな制度であろうと、制度には制度の持つ「寿命」というものがあります。最初はうまくいっていたシステムでも、時代が変われば、弊害の方が頭をもたげてくるというものなのです。」と記しています。戦後の経済成長に大きく貢献があった、自民党政権と官僚制度が今批判を浴びているのも、このシステムの弊害が大きくなった故の事でしょう。
 医療に目を転じてみると、国民皆保険制度の問題があげられます。この制度によって多くの国民が安心して医療を受けられるようになり、国民の健康に寄与してきたのは事実ですが、現在起きている様々な医療問題の多くが、医師(歯科医師も含む)や病院の問題だけではなく、国民皆保険制度にあるという事に気づいている人々は少ないと思います。ここにもシステムの弊害が出ているのです。
 ではどのように変革していったらいいのでしょうか?塩野氏は「どんな民族であろうと、どんな組織であろうと、自分たちの体質にまったくないものを外部から持ってきて移植してもうまくいくはずはない。たとえ一時は劇的な成功を収めても、土壌に合わない改革では定着はまずもってむずかしい。したがって改革とはまず自分たちが持っている資質や特質の、どれを生かし、どれを捨てて組み合わせていくかという再構築の形を取るしかないのです。P249」と書いています。日本人の特質、資質とは何でしょう?それをどう保険制度の改革に生かしていったらいいのでしょう?多くの英知を結集しなければ出てこない結論だと思います。
 また塩野氏は「医療と教育は、文明度の高い都市を維持するためには欠く事のできない要素ですが、かといって、これをすべて公費でまかなう事になれば増税は避けられない。P311」とも書いています。何でも先送り(昨日の管、小沢会談もしかり)して本格的な消費税論議を避けている民主党に改革を任せておけるのでしょうか?

 
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