2010年05月17日
競争の原理
 堺屋太一と渡部昇一の対談「競争の原理」(竹井出版)で医療について書かれた箇所について調べようと思い、久しぶりに本棚から取り出した.探している箇所は見つからなかったが、面白い箇所がいくつかあったので紹介したい。
 堺屋太一が、まえがきに「歯科医はよく儲かる職業であったが、今はもう過剰だ」と書いている。その日付が昭和62年9月となっている。西暦になおすと1987年、今から20年以上前のことだ。文中に護送船団方式の銀行の将来について心配している部分があるが、今ではそれは現実になり、かつての銀行名で残っているものはほとんどない。まさに慧眼である。

 この本の最初には「四k問題は何を示唆しているか」ということが取り上げられている。四kとは、国鉄、米、教育、健康保険のことをさす。既に国鉄については民営化され、米についても自由化され何年もたつ。すでに四kという言葉も死語になっている。
 対談で二人は競争のないところに発展はないと何度も言っている。また競争はあるのだが、それを自覚していない例とし、国鉄について、近距離輸送では私鉄やマイカーとの競争があるし、長距離輸送では飛行機、貨物輸送ではトラックやフェリーとの競争もあると記している。
 歯科界もかつては健康保険に守られてきたが、今では歯科医師のワーキングプアーが話題になっている状況である。
 
 今から20年も前に、私の師である川村泰雄先生は「歯科医は隣の歯医者ではなく、ホンダやソニーと競争しなくてはならない」と述べておられた。当時それを聞いた私の後輩は、ホンダやソニーの会社の規模や資本力と勘違いし、「そんなの無理じゃんねえー」と言っていた。川村先生がおっしゃっていたのは、ホンダやソニーが提供する商品の魅力と歯科医療が患者さんに提供できる魅力が競争し、しかも勝てるようにしなくてなならないということである。堺屋太一、渡部昇一などの偉人と同様、まさに視点が違うということを感じさせられたものである。
 私もホンダやソニーの魅力に勝てるような歯科医療を患者さんに提供できるようこれからも努めていきたいと思う。

 
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