2012年02月04日
歯科治療の先にあるもの
 私が大学を卒業した約40年ほど前には、大学病院では口腔ケアやインプラント治療といった診療科目もなかったし、ましてはその為の教育というものもなかった。
 口腔ケアや介護といった問題は、近年急速に高まった高齢社会の問題とリンクしているし、またインプラント治療については、世界的な研究の発達により、非常に特殊な治療といったものから、今では多くの開業医が手がけるものになりつつある。(その事による弊害が過日NHKのクローズアップ現代で取り上げられた,インプラントのトラブル急増につながっている)
 さて、このような歯科技術の事もさることながら、インフォームド・コンセントという言葉に代表されるように、患者さんとの関係についての事も多く取り上げられるようになり、一部の医科大学では医療面接という事を専門に学ぶ講座もできたという報道もあった。
 私が卒業した頃は、医師や歯科医師が、学問にのっとり、適切な処置をしさえすればいいと考えられていたように思う。そして、しっかりとした医療技術を提供すれば患者さんは幸せになれると思われていたのではないか。
 大学では歯科医療に必要な知識や技術を教えてはいたが、患者さんの幸せとは,などという事は教えられなかったように思う。

 幸せといっても、それは一人ひとりの価値観が違うので何を持って幸せかという事もそれぞれ異なる。
 ホリスティックデンティストリーを体系づけたアメリカの歯科医師Dr.パンキーはインタビューという事を大切にした。そして彼の歯科臨床哲学の中で、患者さんを知りなさいということを言っている。では患者さんの何を知るのか?それは患者さんの価値観であると思う。
 入れ歯を入れたいという患者さんが来院された時、見た目が気になるのか、美味しいものが食べられなくなったのかでは、まったく異なる。
 でも多くの入れ歯を入れたいという患者さんは、ただ漠然と今のが不具合だからという理由だけで、その人本来の持っている価値観、''嫌な歯科医院''にわざわざ来た理由を忘れてしまっている事が多い。それを聞き出すのがインタビューの技術だと思う。

 
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