2013年06月21日
痛くないMI治療の落とし穴 No2
 歯界展望別冊「臨床に役立つ 接着修復のすべて」宮崎真至編に虎ノ門病院・歯科の山田敏元先生が「接着の過去・現在・未来」というタイトルで寄稿されています。
 その中で現在使用されているコンポジットレジンの始まりともいえる、充填用即時重合レジンとして1951年にPalavitが作られたが、修復後に起こる歯の神経の痛みや変色により、それ以前に使われていた、シリケートセメントの代わるものとしての期待は裏切られたと書かれています。
 私が大学を卒業した1979年には、コンポジットレジンは、完全にシリケートセメントに代わるものとして、一般に使われていましたが、歯の神経の保護の為、裏装といって、削った歯の表面とコンポジットレジンの間に別の詰め物を一層詰める処置を行っていました。
 当時はまだ、レジンに対する歯の神経への刺激という事が言われていました。そういった時代を経ていますので、術後に起きる「歯がしみる」「歯が痛む」といった症状は、使用材料によるものか、かみ合わせのストレスなど外部に理由があると考える傾向にありました。

 しかし、現在では、そのような術後に起きる症状は、マイクロリンケージといって、詰め物と歯の表面のわずかな隙間からの刺激あるいは細菌の侵入によるものと考えられています。そしてカリオロジー(ムシ歯学)の発達により適正に形成されたものに、確実にボンディング(接着)操作を行ったなら、術後の不快症状は出ないと言われるようになりました。
 つまり、もし仮にそのような不快症状が出たなら術者による技術的なミスという事になったのです。私がかつて見た,奥歯の充填で中の方でムシ歯になっている症例などは、確実なボンディング操作が出来ていなかったとも考えられるのです。
 この事は歯科医側にとって、重大な意味があります。以前なら材料など他の外的要因により、不可避なものとして考えられていた術後の不快症状が、すべて歯科医側のテクニカルエラーとされるという事です。
 猪越重久先生の本を読むにつけ、ひとつひとつのステップ(たとえばエアーブローという乾燥の仕方)を確実に行う大切さを痛感するところです。

 
ボットからトラックバックURLを保護しています